陰陽師のリスク(本文)

 陰陽師は神の霊を封じ込めることができるという。神の霊体は高次元世界を行き来しているので「神を封じる力」とは高次元世界に及ぶ力である。
 彼らの主張が真実なら、神や悪魔や神聖な霊体たちが、もっとも恐れるのは人間(陰陽師)ということになる。
 「封じ込める」と言うが、例えば私たちが牢屋に一生入れられたことを考えてみよう。封じた者に憎悪の念が湧くはずである。人間の一生は短いが、霊体の寿命は無限であり、閉じ込められる期間は無限に長い場合もありうるだろう。その場合の憎悪の念は計り知れないほどに膨らむに違いない。永遠の寿命を持つ霊体を「封じ込める」というのはひと思いに殺してしまうよりも激しい拷問に違いない。
 封じた霊体には仲間がいるだろうから、仲間たちが全力で「封じた者」を攻撃する可能性がある。だから「封じた者」は危険がつきまとう。あまり穏やかな話ではない。
 逆に考える。神を封じても危険が及ばないのはどういう場合だろうか? これは二つ考えられる。封じられた神が酷い悪行をし、他の霊体たちが皆「罰を与えること」を全員一致で望んでいる場合。もう一つは封じた者が巨大な組織に属していて、攻撃すると反撃をくらう場合であろう。例えば、巨大な麻薬組織のマフィアに家族を殺された場合、マフィアは強すぎるので報復をせずにあきらめるだろう。巨大な暴力か権力に守られている場合にしか「神封じ」はできない。
 密教の僧侶は「自身は如来に守られている」と信じているので「神封じ」や「神との交渉」を行う。陰陽師もまた大きな傘に守られていると彼らがそう思っているから「神封じ」を行えるのだろう。誰が行うにしても神封じや消霊は暴力的手段であり、どんな大義名分があったとしても「カタギ」の人が行うものではないと私は思う。もし、彼らが大きな力に守られていなかったり、封じた霊体が格の高い神であったたりした場合、彼らの命は危険にさらされる。→次の本文を読む