量子論が機械論者に牙をむく(本文)

 さきほど紹介したペンローズのような天才数理物理学者が機械論を撃破しにかかっている。だが勝負は永遠につかないことがわかっている。その理由は「わからないことが全てわかるようになることは永遠にない」からだ。科学が進歩すればするほどわからないことが多く発見されていく。量子の動きが摩訶不思議で計算不能であることがわかるようになったのはつい最近の科学の進歩のおかげである。
 ペンローズは「意識」というものに量子力学が関わっていることを確信している(脳科学者の多くは彼の意見に猛反発している)。その量子理論の根底は次のようなものだ。
 古典的な法則には計算不可能なプロセスは含まれていない。一方量子力学の波動関数の収縮のプロセスには、計算不可能なプロセスが含まれている可能性がある。
 他に計算不可能なプロセスがあるわけがないのだから意識には量子的なプロセスが関わっていなければならない。となる。
 一方、脳科学者は「意識は脳の中の多くのニューロンの発火による」と考えている。ニューロンの発火のようなマクロな現象には量子力学は関わっていない、古典的な物理で十分とされている。
 よって前章で説明したチューブリンの話(ペンローズ)は彼らに言わせれば「とんでも科学」と呼ばれる。だが本当に「とんでも科学」なのは「計算不可能なプロセスなどない」と言い張る脳科学者たちであろう。
 前にも述べたが「〇〇ではない」ということを断言する者はもはや科学者ではない。警察が犯人を証拠不十分で釈放するときに、「こいつは犯人ではない」と誤認逮捕を認めるのは「あらゆる捜査を死ぬほど行ったときだけ」に限られる。それを十分な捜査をせず、証拠を敢えて見つけずに「犯人ではない」と宣言して釈放してしまうのが一般的な脳科学者である。だから「〇〇ではない」と結論を出す者を私たちは信じてはいけない。
 永久に決着はつかないことがわかっているが、ペンローズは既存の脳科学を破壊しにかかっていることだけは確かである。→次の本文を読む