酵素と量子力学(本文)

 あらゆる動物や微生物や植物は何百万種類という酵素に頼って生きている。数十年前なら生物学者は「酵素は単なる生物学的な触媒でしかない。」という考えを支持していた。しかし、ここ20年で酵素という生命の触媒は量子の何らかのトリックをうまく利用していると言われるようになった。
 ペプチド結合の切断反応を加速させる従来の酵素メカニズムモデルでは、反応速度がせいぜいおよそ100万倍にしかならず、実際の酵素の加速係数に比べるとごく小さい値にしかならない。酵素の活性部位のアミノ酸が置き換わると、酵素の能力が大きな影響を受けるのだが、驚いたことに、活性部位から遠い位置のアミノ酸が置き換わっても大きな影響を受ける。そして実際のところ、うまく機能する酵素を人工的に作ることは実現していない。これらのことより、量子力学的な機序が酵素に働いていると考えられるようになった。
 酵素は食べ物を分解・消化するだけでなく、細胞の中でエネルギーを作り、呼吸や運動をするために不可欠なものであり、生命活動の源である。その酵素が量子的な動きをしているとなると、人間を含めた生物はあらゆる生命活動が量子力学的な法則に従って動いていることを示唆させる。たかが酵素では済まされないのだ。→次の本文を読む