逆転の発想(本文)

 チベット医学は上記の病気4分類が絶対的である。この意味は逆転の発想となる。
 例えば西洋医学的に考えるなら、1)過去生のカルマによる病には 癌、心臓病、膠原病などがあって・・・と分類していく。しかしチベット医学では例えば「癌」という病気の中に「過去生のカルマによる癌」「今生のカルマによる癌」「鬼神による癌」「表面的な癌」の4種類がある・・・というように発想が逆になっている。各病気が4つに分類される。
 西洋医学では「癌は進行すれば治らない」という考え方だが、チベット医学では進行の度合いは無関係で、「今生のカルマによる癌」「表面的な癌」は進行していても「治せる」のであり、「過去生のカルマによる癌」「鬼神による癌」は進行していなくても「治すのは困難」となる。
 西洋医学では病理学的に未分化か高文化か、どの組織由来か、どこまで広がっているか?などで分類し、治療法を決める。が、チベット医学では病理的な分類は意味がなく、まずは根本原因をさぐって「治せるか?」から入る。
 私はチベット医学が「極めて真実に近い絶対的な医学」とは思わない。だが、歴史ある伝統医療として敬意を示すなら、最低限、病の4分類について同意することをお勧めする。
 具体的に言うと、「治せる癌」と「治せない癌」があることを意識するということ。
 チベット医学では「表面的な癌」は食事療法などで治ると述べている。だから例えば「食事療法で癌が治る」と森下敬一先生のように本をお書きになるのは素晴らしいことである。だが、全ての癌を食事療法で治せるわけではなく、「過去生のカルマによる癌」「鬼神による癌」は食事療法では治らないとチベット医学では述べている。
 食事療法では治らない癌は、むしろ西洋医学で切除、ないし放射線療法の方が延命効果が高いかもしれない。
 西洋医学ではなく、他の方法で「癌を治す」と宣言している医師は、その限界を理解しておいて損はない。つまり「波動医学や食事療法でも治らない癌がある」ことを意識しておくことだ。それは自身のプライドを著しく傷つけることになるが、「絶対に治さなければなんらい」という重圧から解き放つ。「治らないものがあること」に目をそらすと、遺族から「あと3年生きられたものを1年にされてしまった。その損害をお金で支払ってください。」と訴訟されることがある。
 進行癌を治し、人の人生を救うという素晴らしい功徳を積んでおられる先生にこそ、謙虚であってほしいと願っている。進行癌から患者を救った経験があったとしても、自身の考案した治療法では治せない癌があることを認めよう。それは霊能治療ができる教祖でも同じことである。癌治療を誇張して宣伝して逮捕されることがあり、場合によっては終身刑となるケースもある。
 癌に限らず、慢性病・難病にたずさわる治療師は「自分の力量では治せない病がある」ことを理解しておく必要がある。「何でも治せる」と宣伝して患者の争奪戦をすることは望ましくない。私は高次元世界のエネルギーで発症した病の中には「治せない病がある」ことを述べているチベット医学に敬意を表したい。→次の本文を読む