密教では方向転換を教える。知性から直感への転換、個別的から普遍的への転換、自我から無我への転換、有限から無限への転換。
この転換を実行することが転生輪廻する目的と密教は教える。実行できた者から転生輪廻を離脱していく。つまりこの世に生きる意味、生まれた意味は「転換」にある。文章に書くとたやすくできそうに聞こえるが、これが出来れば「神的存在」になれるわけであるから、達成できる確率は何十億分の1であろう。ただし、輪廻を繰り返すのなら人生のやり直し回数は無限であるからいつかは必ず達成できるだろう・・・というような気の遠くなる話である。それほど転換を達成することは困難で現実離れしている。が、それにしても、転換に人生を充実させるヒントがある。
楞伽経(りょうがきょう)によれば「われわれを輪廻の幻想へとより深く導くのはまさにこの世界の諸現象への「対象(対物)的な」関わりでありその合理化と知的分析である(同著)。その世界(3次元世界)の武器で闘うことに努めるほど一層真剣に現世的な現象や秩序の実在性を信じ、その奴隷になる。」とある。
3次元世界の武器とは物質であり、物理化学である。つまり科学力で3次元世界を生き抜こうとすると3次元を実在と考え人生を空虚なものにしてしまうという。「何をバカなことを言う。3次元(物質)世界は実在しているではないか」と主張したい方はちょっと待った。すでにアインシュタインが物質は波動エネルギーであって、物体・物質と言うものが存在しないことは既知である。物理化学の知識力は3次元世界でしか通じない。だから3次元世界の波動エネルギーの形態を確かに操作できる。操作できるとは想像も破壊も思うままということだ。だから科学力は支配力である。それは認める。しかし、3次元のパワーをどれほど駆使しても、高次元世界の産物である魂・意識体には傷一つつけることができない。科学に支配されると、魂・意識体までもが3次元世界の産物であると考えてしまう。その考えを「知識力で3次元の奴隷にされている」表現する。「誤りは心によって犯されるのではなく知性によって犯される」と言われる。心の本質は死にも再生にも属さず、創造されず永遠である。死や再生は3次元という特殊な波動形態世界でのみ存在している。
3次元世界の波動形態は壊れやすい。したがって私たちはそれらを奪い合うために戦争をする。壊れやすいからこそ執着する。その執着が心を3次元世界に束縛する。しかし、真実は「心は3次元世界には存在せず、壊れないし永遠だよ」と密教は述べている。「だから3次元世界に存在する肉体に執着し過ぎて、本質を見失わないでね。」と教えている。
ならば自殺すればいいと考えるかもしれないが、そのことについては前述した。3次元にがんじがらめに束縛された状態での自殺は、その束縛を解かないまま高次元世界に戻ることを意味しており、それは高次元世界で苦痛を背負うことを意味している。→次の本文を読