第12章 はじめに(本文)

 おそらく、量子医学というタイトルから密教の話になるとは誰も予想がつかない。しかし、ここまで読んだ方なら「病気は目に見えない世界の場の影響を受けている」ことをなんとなく理解できたはずだ。目に見えないとは光波として網膜に映らないという意味ではなく高次元に存在するという意味である。
 量子力学では高次元が存在していなければ起こりえないことが起こることがわかっている。それはたとえば素粒子の「波と粒の両方の性質」である。水面に一滴しずくが落ちると、波は周囲に円周状に広がる。波は全体に存在する。が、粒は1箇所にしか存在しない。波と粒が両立するということは一か所に存在しながらかつ同時に無数に存在するということを意味し、この概念は3次元世界では理解不能。つまり高次元世界が存在することが前提となる。
 そう考えると量子医学とは高次元に存在する病因を考察する医学と定義できる。だから量子医学は目に見えない高次元の話にならざるを得ない。
 さて、目に見えない高次元の存在をどうやって科学的に説明つけられるのかと思うだろう。高次元はオカルトだと。
 いやそうではない。例えば私たちが2次元平面に存在していると仮定しよう。この平面には正方形の人、三角形の人などが存在していたとしても、実際には全員が線にしか見えない。いや、線と言っても無限に薄い線であるから線にさえも見えない。では互いの存在をどのようにして確認し合えるのだ? それは2次元平面を移動することで相手の形を認識できる。相手が正方形であるなら、自分が相手に接しながらその周囲を歩くことで、歩いた軌跡が正方形になる。このように、本来2次元平面では認識できないはずの形態が、移動することによって把握できるのである。もちろん、3次元空間からこの2次元平面を見れば、各自がどんな形をしているのかは一目瞭然となる。つまり丸見えだ。しかし、2次元平面に存在していても、移動することによって自分たちの形態を調査することができる。
 これと同じことが私たちの3次元空間でも言える。例えば、沖縄県で得たエネルギー波と全く同じものを同じ時刻に北海道で得たという事実がわかれば、このエネルギー波は高次元から来ていることが判明する。その波が3次元空間に存在するものであるならば、波は距離の2乗に反比例して減衰するが、2000キロメートル以上離れても減衰せず、しかも時間差がなく届くわけだから、その波は高次元に存在していなければならないと理解できる。
 このように、低次元世界から高次元世界が全く理解できないということはなく、「少しは理解できることがある」のである。2次元平面図でさえ、2点で撮影したものを重ね合わせることで立体視ができる。となると、3次元空間では、現在と過去の2点から見た情景を重ね合わせると、たとえば未来が見えるかもしれない。
 このように高次元世界で起こっている事象を低次元世界で観測することは、全く不可能ではないと理解していただきたい。
 これまで機械論科学者はこのような考え方を一切認めなかったが、量子力学が台頭したせいで部分的に認めざるを得なくなった。ただし、認めたとしても無機物の世界だけであり、有機物(生物)の世界ではまだまだ認められていない。そして医学の世界では皆無。そこに量子医学の風を吹かせるのであるから反発されることは必至である。
 さて、密教の話に戻そう。密教はまさにこの目に見えない高次元世界で起こっている事象を研究した教科書である。ネーミングの由来は単純だ。高次元世界で起こっていることは、それを観測できる能力を持つ者にしか理解できない。だから、誰かに教えようと思ったところでその能力を持たない者には理解できない。だから「密」になってしまうというそれだけの意味である。秘密にしたり隠したりしているわけではない。ただ表に出しても理解できないだけである。その能力の事を一般的には霊能力と呼んでいる。
 ちなみに、私の妻は霊能力を持ち、高次元を覗き見ることができる。信じなくてもいい。だが、24時間妻と一緒にいる私からは、高次元世界の法則を垣間見ることができる。私が量子医学について言及できるのはそのおかげである。私は観察したことを言葉にしたが、それを秘密にしたり隠したりしない。そんなことをしなくても、ほとんどの人には理解できない。だから密教なのである。教えても信じない。エセ科学などと呼ばれる。なぜなら飛躍し過ぎているからである。それはそれで構わない。無理に理解する必要はない。
 しかし、アインシュタインが相対性理論を発表し、量子物理学が台頭した現在、密教が飛躍し過ぎた理論ではないと再び注目を浴びるようになった。密教ではアインシュタインが述べているような(全ての物質は波動である)ことを3000年前(インド仏教)に述べている。
 さて、誤解しないでほしい。密教は宗教ではない。宗教は教えを広めることを目的としているが、密教は霊能者にしか伝承できないため、広がることがない。だから密教が民衆を洗脳することはない。聖書のように民衆に媚びることが一切ない。密教は普及の目的を全く持たず、ただひたすら霊能者のための学問でしかない。
 しかし、この学問は、国を治める者たち(支配者)にとって都合が悪い。高次元の存在を立証されると普通の宗教概念では国民を支配できないからだ。つまり密教は他の宗教や国家から目の敵にされる。だからインドに発祥した密教は、今ではチベットと日本にしか残っていない。
 ここではヘルムート・ホフマンというドイツ人が、20年間チベットで密教を学び、それを書籍化した。「チベット密教の真理 訳:山田耕二(工作舎)」から要点をかいつまんで解説して行く。
 上記の密教の本は極めて難解である。理由は前述したように、霊能者でなければ理解できない世界の話だからである。密教というだけあって常識では理解できない。だが、その理解できない世界の話が原因で病気が起こっているのなら、病気を根本的に治すにはできるだけ理解したほうがよいだろう。→次の本文を読む