病気の直接因(3つの体液)(本文)

 チベット医学ではルン(風)、ティーパ(胆汁)、ペーケン(粘液)の3つの体液のバランスで病気を考察する。体液の動態が病気を作るという考え方は、西洋医学で言う血液やリンパ液の流れという意味ではなく、高次元世界に存在する目に見えない流れ(多くの機能をコントロールする要素)を示している。つまりチベット医学でいう体液は3次元世界的に考えるべきではない。3次元世界の唾液、汗、血液、内分泌などとつながりを持つが、それらを高次元からコントロールする要素として与えられているものととらえるべきである。よって医学者たちがチベット医学の内容について「何をわけのわからないことを言ってるんだ」と批判して拒絶することは不適切である。チベット医学は歴代の霊能者たちが医療現場での実践から体感して知識を互いにつきあわせて検討し合い、築き上げた高次元世界の理論であり、西洋医学が全く到達し得ない別世界の理論である。
 少し話はそれるが、医学は霊能力だけでは発展できない。知能指数(学力)が高い者を選りすぐり、研究を重ねなければ医学という体系を築くことはできない。よってチベット医学といえども、チベット医になるには霊能力が飛びぬけているだけではなれない。しかし、実際の治療力は霊能者の方が高く、治療現場では権威の逆転(下克上)が起こる。そうした知能指数vs霊能力の激しいしのぎあいが必発であり、知能指数の高い者が霊能者を左遷するという現象もまた必発といえる。医学体系に霊能者を参加させることは、このような人間の小競り合いを作る。霊能力と知能指数は次元の異なる世界の産物であり、本来は競争さえできない能力なのだ。だからチベット医学というものがこの世に存在すること自体が奇蹟である。
 おそらくその奇蹟を成立させたのは、国民全員が霊能者に敬意を払うという土台ができあがっているからだろう。そしてチベット自治区として必死になって独立し、中国の軍事力に屈しなかったからこそ、チベット医学が今も尚残っているのだろう。チベットではこの「必死の独立運動」の末、500万人が殺されたと言われる。今、こうしてチベット医学を学べるのはそうしたチベット人たちの戦いの上に築かれている。この奇蹟に私は敬意を払わずにはいられない。以下、チベット医の理論は、3次元世界の話ではなく、高次元の話であるということを頭の真ん中に据えて読むことにしよう。→次の本文を読む