僧侶の修行中の道場のお寺にまかないの人たちの休憩所が二部屋あった。ところがまかないさんたちが「気味が悪くて使えない」という部屋が一つあった。主人公がそこに行くと顔は人間、体は猿、尻尾が蛇という合成霊(キメラ)を発見した。若い僧侶の雑念が生み出した複合体の霊。おそらく生霊が合体して生成した霊体と思われる。主人公の祈祷で奥の部屋に閉じ込めて開かずの間とした。
生霊については第16章で述べた。念が魂と結びついて一つの新たな霊格という意識体が生まれるというもの。生霊はネガティブな感情から作られることがほとんどであるので、私たちにとっては悪霊の部類に考えられる。
この生霊が目的を失ってさまよった場合、その行く末としてどうなるのかの一つの道筋として「キメラ」がある。目的を失った生霊が合体して一つの意識体となるらしい。
私はキメラについてはあまり勉強をしていないので理解できていないが、妖怪と呼ばれている怪しい霊体がこのキメラのような形で生成された意識体ではないかと私は推測する。当然ながら妖怪は人間らしい理性を持ち得ていないと思われ、我欲を満たすためにただうごめいている霊体なのではなかろうか。妖怪に取りつかれてしまうと、彼らは理性がないだけに厄介かもしれない。
生霊がこれほどたくさん飛び交う現代社会であるからして、妖怪・キメラも増えていると思われる。妖怪の生態は知られていないだけに不気味である。妖怪の潜みそうな廃屋などには近寄らないことが最善の策だろう。→次の本文を読む