形態形成場要約

 一つの受精卵から細胞分裂を起こし、分裂した細胞が最上部なら頭や脳になって行き、最下部なら臀部や足になって行く。そうした魔法のような出来事は「各細胞に存在している遺伝子の情報だけでは絶対に起こらない」という当前の話が近年登場してきた。
 なぜなら遺伝子情報は全細胞が全く同じだ。少しの違いもない。同じなのにどうやって足に位置する細胞が足になり、頭に位置する細胞が頭になれるのだ? 
 人間のように、37兆個の細胞で一人の超複雑な建造物を作るには、全体を指揮する設計図がなければ到底無理だろう。遺伝子という全く同じ内容の指令書を細胞に持たせるだけでは、各細胞は自分が人間の体のどこに位置しているかさえも知る方法がない。だから遺伝子の情報で人間が作られるという理論自体がクレイジーだという話になっている。
 だが、全体を指揮する指令はどこから来て、どこに存在する? という疑問が沸く。少なくとも受精卵の中にあるのではなく外部にあるはず。外部ってどこ? それって魂みたいなもの? という科学想定外の議論になっている。
 全体を作る情報(設計図)が遺伝子以外にあると仮定すれば、それは3次元世界のものではなく、高次元から来ているに違いない。だから、これまでの科学ではそういう話が嘲笑され、誰にも支持されなかった。
 ところが量子力学が誕生してから「高次元から情報(設計図)が来ている」という話を笑うわけにいかなくなった。量子論自体が高次元の存在を認めざるを得ない理論だからだ。
 受精卵は高次元に由来する設計図の情報をまとっているはずであり、それを形態形成場のような「場の理論」とする説が台頭している。
 こうした理論が最近出たのかと言えばそうではなく、18世紀までは生気論として誰もが普通に信じていた理論だった。19-20世紀、科学者が傲慢になりすぎたために、神秘的な力を全否定したのだった。その200年間は機械論科学者の理論が世間を支配した。が、21世紀、量子論者の活躍で再び生気論が息を吹き返した。
 そして現在、量子生物学では、生命には高次元に由来する場(設計図)があることはほぼ常識化しており、旧科学と言える生物学や医学がそれを完全に無視して反発しているという図式が成り立っている。
 生物学や医学が形態形成場の存在を無視するのは当然なので、その態度を非難しても仕方がない。だが既に「高次元由来の場」を修正することにより、難病を治癒させる試みがドイツとロシアではさかんに行なわれている。場の治療に関して日米はかなり出遅れている。人の命よりも医薬系産業の保護に執心した結果である。