形態形成場仮説(本文)

 ここではシェルドレイク著「生命のニューサイエンス」を要約する。
 形態形成場はそれ自体がエネルギー的なものではない。直接観察できない。が、物理的変化を命令することができる。疑問に思うかもしれないが、重力場や電磁場も同様に目に見えずさわることもできない。その存在は重力作用・電磁作用を通してしか知ることができないのと同じである。
 有機体理論によれば、有機体(例えば酵素)は単純なものから複雑なものまで階層的に組織化されている(アンフィンセンら(1975))。その組織化命令が形態形成場。
 「組織化命令」はおそらく私たちには意味不明な難解な言葉である。よって私が少し補足しておく。
 例えば、細胞内でエネルギーを作るミトコンドリア。ミトコンドリアの中にも内膜、外膜、クリステ、マトリックスなどの構造があり、これらに統合した指令を送る「組織化命令」が存在しているはずである。そうでなければミトコンドリアは効率よく熱を生産できない。ミトコンドリアは細胞内に300~400存在し、RNA、ゴルジ体、リボゾーム、ライソゾームなどと共に協調した活動をしている。これらの細胞小器官を統合するための「組織化命令」があるはずである。そして細胞を統合して組織として動くための「組織化命令」が存在し、組織を統合して臓器として動くための 「組織化命令」が存在し 、臓器を統合して人間を動かすための 「組織化命令」が存在し 、階層的に組織化されているというのが アンフィンセン の仮説である。
 さらに密教の世界では人間界も組織化されており、その上に天界が組織化され、その上に菩薩界が組織化され、その上に如来界が組織され…というように、ずっと宇宙規模の「組織化命令」があるとされている。それを絵画で表現したのが曼荼羅である。この組織化命令のことを形態形成場という。密教はすでに2000年前から アンフィンセン と同じことを表現していた。
 形態形成は形態形成の根源となる胚があって初めて起こる。胚はそれ自身の形に由来する形態形成場に囲まれる。形態形成場は発生しつつあるシステムが潜在的に持つ将来の状態に対応する。つまり形態形成場はシステムが最終的な形をとる以前からすでに存在している(アガーら(1942))。
 再度の形成がきわめて高速度で行われるという事実から見て、このプロセスが限られた数の経路を通ることは必須である。形成の開始には核形成が存在し、その場所は立体配座の内外に揺らぎをもたせる所である(アンフィンセンら(1973))。
 量子力学では電子の軌道は確率分布とみなされる。それと同じで形態形成場一般もまた正確に定義することはできず、確率分布として与えられる(サぺス(1970))。
 ここでは頭がかなりこんがらがるが、これらを理解してもらう必要はない。形態形成場に関する考察はシェルドレイクの思い付きではなく、種々の科学者が考え出している理論であるということを理解していただきたいのである。→次の本文を読む