形態形成場はどこにあるのか?(本文)

 形態形成場にはどんな情報を含めることができるのかを考えてみよう。シロアリは自分の体の何百倍もある巨大なアリ塚を作るが、その設計図の情報が形態形成場に含まれている。設計図情報は全てのアリが持っているのではなく、女王アリのみが持つと推測されている。すべてのアリが形態形成場の情報を持っていると仮定すると、その情報は差異(個性)ができてしまうからだ。
 このことを実験した南アフリカの博物学者ユージーン・マレイがいる。彼はシロアリのアリ塚をわざと破壊し、その修復を観察した。そして女王アリだけをとらえて殺した。するとその瞬間から白アリたちは巣の修復をやめてしまったのだ(出典:「世界を変える7つの実験」ルパート・シェルドレイク)。同様のことは蜂でも観察され、女王蜂を殺すと蜂たちの動きがバラバラとなることは一般的に知られている。映画、インディペンデンスデイは宇宙人から侵略を受けるのを地球人が阻止した物語だが、この物語の結末は宇宙人の女王を殺害したことで攻撃が止んだという結末である。この映画はそうした場の理論をSFとして応用しているのである。
 設計図という形態形成場はシロアリたち全員が持っているのではなく、女王アリだけが持っていると推定できる。
 仮にシロアリの各自が設計図を持っていたとする。形態形成場は各シロアリが生きて来た環境によって変化する。ならばアリたちがもつ設計図情報は生きてきた環境によって差異が出るはずで、差異のある無数の設計図で巣を作っていくと、巣はあちこちに不調和な部分が出てしまい、整然と完成できなくなる。よって形態形成場はリーダーが持っている、あるいわ全アリが持っているがリーダーの形態形成場しか作動しないシステムになっていなければならない。
 工事現場を考えてみよう。超高層ビルの設計図は建設会社で管理し、指揮者たちだけが持っている。水道管を納品した業者が、ビルの設計図を持つ必要はない。水道管を作るための鉄を作っている製鉄所の労働者がビルの設計図を持つ必要がない。さらに鉄の元となる鉄鋼石を採掘している労働者がビルの設計図を持つ必要はない。
設計図は環境によって微妙に変化していくものであるから、その枚数が多ければ多いほど、機能しなくなる。船頭がたくさんいる舟では舵がとれない。
 人間の体の複雑さは、ビルどころの騒ぎではない。気絶するほど複雑な設計図であり、それが細胞の各DNAに存在しているなどありえるだろうか。それこそ設計図が37兆個もあることになり(私は37兆という数がどれほど大きい数なのか想像もできない)、それで一人の肉体が完成させられるなどという発想は科学者として愚かすぎると思う。
 人間全体の設計図は各細胞レベルが持っていたのでは統合して調和のとれたものにならなくなる。つまり、人間の設計図は魂(霊体)に存在し、それは一人に一つずつしか存在しない、DNAに全体を統合する設計図は存在していないとする論拠である。
私のこの考え方は松久先生のDNA12重らせん構造説(9-11)を否定する。松久先生はDNAに形態形成場があると主張している。どちらが正しいという議論はしない。→次の本文を読む