幽体離脱実験(本文)

 スイス連邦工科大学では幽体離脱を科学的に再現する実験を行っている。ゴーグルをつけて仰臥位に寝て、ゴーグルに映る背中の絵を見る。その絵に赤い点があり、その点と自分の背中のマッサージ機がこする場所がシンクロするような仕掛けになっている。これを見ていると、ゴーグルに映る背中を自分の背中だと脳が錯覚を起こし、体が浮いた感じになり、自分の体が沈んでいくような感覚になるようだ。この実験により幽体離脱は「脳の錯覚」と彼らは考察する。
 幽体離脱は自分が寝ている姿を認識して初めて成立する。体性感覚の変化ではなく、寝ている自分の視点とは明らかに異なる視点から情景が見えて初めて成立する。そもそも「体が浮いた感じ」は幽体離脱ではない。このトリックは幽体離脱の定義と一致していない。幽体離脱や霊視が「感覚異常」に基づくと彼らは言いたいのだろうが、彼らの理論は耳鳴りと幻聴を同じものだと定義するに等しく、科学的というにはあまりにも定義をおろそかにしている。
 超常現象を科学実験で再現するという手法には、ほとんど理論の飛躍があり、現在の科学力でその飛躍を埋めることは不可能。不可能だから超常現象と言われていることを再度確認したい。
 大学が援助金が欲しいがために、大金をかけてこのようなバカげた実験をしていることを私は残念に思う。→次の本文を読む