密教伝承者の問題(本文)

 密教は伝承に難問を抱えている。それは「霊能力のある者にしか伝承されない」からであり、霊能力が高い者がトップに立たなければ存続理由がなくなるからだ。密教に期待されるのは祈祷力であり、一般人が先祖供養で行う宗教とはわけがちがう。
 前にも述べたが厳密に言うと密教は宗教ではない。神や魔の力で起こっているトラブルを解決するための組織であり、安全保障機関である。国家レベルで密教の僧侶を育てて行くべき組織である。密教とは異なるが、例えば陰陽師は国家機関として呪詛や結界の処理のために設けられていた。
 つまり、密教僧は高次元エネルギーが原因で起こる事件を解決するための警察のような組織であるべきである。しかしながら、密教を伝承できる者は国王よりも強い力を持ってしまうこともある。それが問題だった。たった一人でも何万の軍隊に値する強い軍事力にもなり得た。国王を呪い殺すこともできる。だから国家の首席は現代においても呪いから身を守るための結界を張るなどの処置を国民には知られないように水面下で普通にしているものだ。
 そんな組織を誰に管理できるというのか? もしも伝承した者が野心に燃えてしまったら、誰にそれを止められるというのか? 霊能力が高いからといって、我欲の強い者に密教の秘術を伝授してしまえば、テロリストにミサイルを与えるようなものである。
 よって、密教の中では厳しすぎる戒律や修業があって当然。霊力よりも人間としての器の大きい者に伝承させたほうがよいか、それとも霊力重視とするかで常に揺れ動いてしまう。
 戒律で支配すれば悪用する者を排除できるが、密教の伝承が弱くなって形骸化し、密教自体が消えて行く。霊能力が強いだけの者が伝承すれば、その力を支配の力として使い、お金も人も権力も集まり組織がどんどん大きくなる。密教の組織は大きくなって安泰だが魔に堕ちる。
 伝承する時に、能力重視か経済的安定重視かの問題を、どんな小さな密教のお寺でも抱えている。霊能力のある住職が死去した後に、子孫に引き継がせようにも、子孫に霊能力がないのならなかなか難しい。他人に渡す場合は霊能力よりも政治力のある者がたいてい住職の座についてしまう。
 そして現状を言うと、霊能力が高い者が密教のトップに立つということはほとんどないと言ってよいだろう。能力の高い者はたいてい左遷されている。
 この矛盾は密教界だけではなく、霊能者全体の問題となっている。霊能力に目覚めた者全員が抱える闇。人間が霊能者の能力開発に勇気を持って取り組むことが、霊能力を持たない大多数の人間に可能かどうかという問題に等しい。3次元世界を牛耳る高学歴者たちと、高次元世界を牛耳る霊能者たちとの生存競争の問題である。
 霊能力者の能力を尊重することはいつの時代も常に難しい。年功序列、学歴重視の支配体系が崩れるからだ。この問題を縮小したものが「密教の伝承の問題」と考えていただいてよい。
 西洋医学で治らない病気を治すことは、こうした伝承問題と無縁ではない。難病治療に携わる者は大なり小なり異次元のエネルギーを用いており、世の中の 年功序列、学歴重視 を乱す。それは波動医学とて例外ではない。高次元の仕組みを解いて病気の治療をしようとする限り、それは西洋医学が足元にも及ばない領域での治療技術となり、世界の覇者たる西洋医学の立場を著しく失墜させてしまう。それはまさに下克上であり一般社会には受け入れがたい。その痛みとどう向き合っていくかが人間の課題である。→次の本文を読む