量子論をとりいれることのできていない医学は、今や古典的な物理や化学をベースに成り立っている。科学の進歩から一歩取り残されている状態にあるといえる。量子化学という分野がないわけではないが、それは前述したように、嗅細胞の仕組み解明などの利用にとどめられており、人間の病気を治す、レセプターのさらにその奥にある情報通信の世界に踏み込んでいるわけでは決してない。
そういう状態である医学が、量子力学の応用の応用である脳の病気に対応することはできていない。今回は医学が脳の病気に対してどのようなアプローチをしてきたかを覗いてみる。
医学の汚点として有名な話だが、1936年ウォルター・フリーマンは眼窩からアイスピックを刺して脳の一部を破壊する前頭葉白質切裁術を精神疾患の患者に行った。当時、麻酔技術が乏しく、脳に感電させて気絶させている間にこの手術を行った。彼は200回の手術で63%の病状が改善、23%は不変、14%が術後病状が悪化したという成績を報告した。彼はまた、精神の振る舞いが脳生理学的な基礎に寄っているという意見を支持した。機械論者である。
現在は全身麻酔下に脳に電気ショックを与えて一部を破壊するというやり方をとっている。アイスピックが電気に変わった。電気ショックはさらに一歩進んで脳内に電極を埋めるDBSという手法に変わりパーキンソン病などに応用されている。
これらの治療法の善悪を問うことは意味がない。脳の素粒子レベルの動向が全く不明なこの時代に、脳細胞を破壊、または電気エネルギーで破壊または抑制するという方法はコンピューターのCPUが故障した時に一部をショートさせて破壊することに等しい。
CPUを治すのにドライバーを手にしている人を見かけたことはない。が、それをまじめにやっているのが3次元世界の医学である。それで症状の一部が改善されるので、野蛮でも、根本治療になっていなくても許されているという現状にある。根本治療には遠い。
世界の脳外科や精神科はドライバーを片手にどこを潰せばコンピューターがうまく立ち上がるかの研究をしのぎを削ってやっている。彼らに量子論を解くことは猫に小判なのだろうか。→次の本文を読む