私たちの体は80歳になっても100歳になっても、大部分の細胞は「生まれたばかりの細胞」で満たされている。どんなに歳をとっていても「今ある細胞は生まれたばかり」ということを認識できている人はどのくらいいるだろう。
ヒトにおいては腸上皮細胞で3-4日、皮膚ケラチフノサイトで約1ヶ月、赤血球で約3ケ月、骨細胞で約10年、脳神経細胞で数10年の寿命があると言われている(古い文献では心筋や神経細胞は寿命が一生となっているが、ここでは寿命については追究しない)。
つまり、腸上皮細胞は生後4日以内の若い細胞で構成され、赤血球は生後1か月以内の若い細胞で構成されている。細胞の年齢は80歳の高齢者でも10代の少年でもほぼ同じである。ただし若い細胞とは言うものの、高齢者の細胞は活性酸素の影響で劣化していると言われている。
ここで老化現象をとりあげるつもりはない。細胞は再生して新しい細胞と入れ替わっている。新しい細胞は幹細胞(分裂能を持つ)から分裂して出来上がるのだが、幹細胞はどんな細胞にでも分化できるわけではなく、肝臓の幹細胞は肝組織へと、腸の幹細胞は腸上皮へと分化するだけである。
ちなみに小保方さんがお騒がせしたSTAP細胞とは何にでも分化できる細胞のことを示し、これまでの医学理論を覆すものだった。赤血球が何にでも分化できるとする理論が千島学説。一方、受精卵の胚細胞はなんにでも分化できることは既知。胚細胞は卵巣・精巣に存在し生殖細胞と呼ばれるが、この細胞が腫瘍化すると、歯や髪の毛、顔の形のある「人の出来損ない」のような腫瘍組織が作られる(奇形種と呼ばれる)。
奇形種のようにいろんな組織から成る腫瘍が出来上がる理由を、「単なる作成ミス」とする医学の見解を私は信じていない。確かに胚細胞はどんな細胞にもなり得ることは知っているが、だからといって受精卵でもない腫瘍から人間の形をした組織が生まれてくる理由にはならない。一つの仮説としてこの章で述べる形態形成場が関与していると私は考える。
事故で足を切断してしまった人はどんな治療を施しても、足が生えてくることは絶対にない。切断端の皮膚は再生するが骨や筋肉・神経が伸びて元の足にはならない。その理由は、組織に傷がつくとその欠損部分を埋めるように細胞分裂が起こって再生されるが、そこに足を作る設計図と幹細胞に対する設計命令が存在しないからだ。細胞は足の断端を閉じるように再生するが、元の足を再現するように細胞分裂することはない。手術で胃を切除すれば、そこに胃が再生されることがないのと同様である。ならばもしも設計図があれば手足や切断した胃が生えてくるのだろうか? 理論上は可能だ。幹細胞と設計図と命令があればできる。ただし、現在の医学は、設計図や命令は「遺伝子情報に組み込まれている」としか考えていない。果たしてそれは本当だろうか。→次の本文を読む