レセプターは医学の急所(要約)

 医学は化学。そして化学はレセプター学。前述した嗅細胞におけるレセプターの仕組み(一つの細胞が何種類もの臭い分子を認識できる)は医学を根底から覆すほどの大事件になっている。
 私は学生時代、運動神経の末端と副交感神経の末端ではアセチルコリンという化学物質が放出され、レセプターにアセチルコリンがはまりこんでスイッチをonにし、筋肉が動くと教科書で習った。しかし、私はこの仕組みがスピードに対応できないことにすぐに気づいた。
 例えばハチドリは毎秒80回のはばたきをするが、そのときはアセチルコリンが毎秒80回分泌されているのだろうか? 蚊は毎秒1000回のはばたきをするが、蚊の神経末端ではアセチルコリンが毎秒1000回分泌されるのだろうか? そんなことはありえないだろう。この疑問を解決するには、レセプターが化学薬品で動くのではなく、動いた先で莫大な信号のやり取りをしていると考えるに至る。→本文を読む