量子の世界は今、ようやくレセプターの鍵穴の中を覗き始めた。それは井戸の中にある大海を覗き見ているようなものだ。医学はその井戸の上に蓋をして喜んでいる。他のあらゆる分野が量子をとりいれているというのに医学だけは井戸の蓋を開けて中を覗こうとはしない。医学は井戸の浅いところを泳いでいる蛙である。
しかし、単なるレセプターにそれほどの神秘が潜んでいるのだとしたら、脳のシナプスはさらにどれほど複雑であるか計り知れない。なぜならシナプスは自分の細胞をタコ足のように伸ばし、他の神経細胞と新たな結びつきを作り、そして一つの神経細胞が多数のタコ足を持つ。たった一つのシナプスでさえ、その量子的な仕組みがわからないというのに、脳は桁違いに複雑である。だから医学は脳神経に全く歯が立たないでいる。
ましてや精神疾患となるとまるで次元が違うということが想像できるだろう。しかし次元が三つも四つも異なる脳に対し、人間は愚かにも向精神薬という化学薬品で立ち向かおうとしている。
化学薬品は金づちを手に持ってコンピューターを修理しようとしているほどに愚かなことだと私は思う。もちろん、コンピューターのファンが故障して、常にファンが最高速度でうなりをあげて回っている時に、金づちは有効打になりうる。ファンを叩き壊せばいい。
しかし、ひいき目に見ても化学薬品は精神に対して有効であるとは思えない。イライラしてつらい時に金づちで頭を殴れば気絶して楽になれるというほどに薬品は脳に乱暴であると私は思う。正常な人が試しに精神科薬を飲んでみればその乱暴さがわかるはずだ。
化学薬品が脳の仕組みに追いつくことなど、千年も1万年も後の話であろう。それほど脳の仕組みは複雑で奇怪で神秘の宝庫だ。おそらく、脳こそが量子力学的なエネルギーでほとんどが動いており、医学と言う旧石器時代の遺物のような学問が脳に入り込める隙間がない。医学が量子論を取り入れない限り、脳への医学的アプローチはこれ以上進展がないだろう。いい加減にあきらめて医学も量子論を取り入れればいいのに・・・と私はいつも思っている。→次の本文を読む