密教にはマントラと呼ばれる短いお唱え言葉がある。しかし、マントラとは何かを説明することは不可能である。それは3次元を超えた概念を持つからだ。
例えば私たちが2次元平面に住んでいたと仮定しよう。全てが平面である私たちに立体の概念を説明することは極めて困難である。ところが立体は3次元空間に住んでいる者からは簡単に理解できる。これと同様に、3次元空間に住む私たちは4次元空間の概念を説明されても理解できない。たとえば、未来予知がなぜできるのか? 透視がなぜ可能なのか? くじで当たりを高確率で引ける仕組みは? と言われても説明できない。だが、世の中には未来予知も透視も狙ってアタリを引ける者も存在する。
これと同じ原理で、マントラという短いお唱え言葉が何であるかを説明することは不可能である。だからマントラを言葉で無理矢理説明すると、その本来の意味が崩れ、必ず誤解を生じる。それを承知の解説である。
マントラは心のイメージを創り出させる力、存在を超えた力、そして知識である。マントラは語るのではなく働く。つまり密教で言う「言葉」は私たちが使っている言葉の概念と全く異なる。
なぜなら、そもそも密教は宇宙とつながる高次元世界の教えであるから、それはあまりにも深く広く、それを言語に置き換えることは不可能だからだ。
だが、密教では言葉を次のように位置づける。
「大地と水の潜在的な力は植物の有機体へと凝縮され、植物の力は人間へと凝縮され、人間の力は音声として熟慮に凝縮される。音声は言葉を作り他の生命体と区別される」と。
私たちはまずこの矛盾に頭をぶつける。ここで言う「言葉」は単なる言語を指すのではなく、全てが凝縮された暗号と考えるべきである。いや、呪文か鍵か・・・どんな言い方をしてもあてはまらない。
その言葉を一般人が用いると、単なる言葉でしかないのだが、霊能者が用いると一瞬にして心のとびらが開くというようなものである。それがマントラ。
もうすでに出だしから密教は矛盾に満ちていて一般人には理解できない。霊能者だけが理解できる。言葉はその高次元とつながる暗号や鍵になっているらしい。つまり密教には私たちが普段使っているような言葉では言い表せない。にもかかわらず密教は「言葉」を最重要な位置づけに置くので理解不能なのだ。
密教で言う「詩」と「音楽」も同様に、私たちが感じているものとは次元が違う。外から聞けば同じに聞こえるが、霊能者が聞く、または奏でると、言葉の意味を超えて一切を包み込むものと共鳴し合い宇宙の頂点へと昇り詰めるパワーとなる。15章の26項でも霊界の言葉について述べている。→次の本文を読む